研究目的 次の目標を掲げ、ツメガエル(以下、ゼノパス)卵の受精成立に関わる場、および関連生体分子を包括的に解析する。 1)ゼノパス卵細胞膜ラフトの精製 2)卵細胞膜ラフトにおけるシグナル伝達の解析 3)受精関連ラフト構成因子の分子クローニング 研究成果1)ゼノパス卵より低密度界面活性剤不溶性の膜画分(LD-DIM)を調製した。LD-DIMは全卵蛋白質の0.1%しか含まない一方で、コレステロールやGM1ガングリオシドに富む、いわゆる「ラフト」的性質を持っていた。LD-DIMは受精成立の鍵分子の一つであるチロシンキナーゼXykを含み、受精時の蛋白質チロシンリン酸化の場であることなどがわかった。LD-DIMからコレステロールを除去する薬剤処理を行うと受精阻害がおこった。このことは、LD-DIMが受精の成立に必要とされる細胞膜マイクロドメインであることを示唆している。 2)1の結果を受けて、精製されたLD-DIMを使った受精シグナル伝達の再構成実験を開始した。LD-DIMがチロシンキナーゼ活性を保持していること、また驚いたことに生きた精子によってその活性が上昇することがわかった。このようなLD-DIMの「活性化」は幾つかの薬剤(GTPgsや過酸化水素)によっても再現可能であった。 3)神戸大学バイオシグナル研究センターの吉野博士との共同により精製Xykの質量分析実験を行った。その結果、XykはゼノパスSrc遺伝子産物(Src1、Src2)の混合物であることが明らかになった。そこで、Src1/Src2遺伝子のクローニングと遺伝子改変を行い、野生型・活性化型・及び不活性化型の3種の遺伝子構築を完了した。COS7細胞を用いた発現実験から、Xykのラフト局在や、Xyk依存的な蛋白質チロシンリン酸化活性が確認された。
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