低分子量Gタンパク質Rac1、Cdc42の軸索成長に関する機能の違いを細胞生物学的レベルで解析するために、ショウジョウバエ胚の初代培養を行い、神経突起の形態を比較した。神経細胞特異的にDrac1活性化型を発現させると神経突起は短くなりその先端に葉状突起様構造と太く短い仮足様突起が形成され、Dcdc42活性化型を発現させると神経突起は短くなり、その先端に大きな葉状突起様構造と細く長い仮足様突起が形成された。ファロイジンを用いてアクチン線維を可視化すると、Drac1活性化型の発現によって生じた太く短い仮足様突起に強いアクチン線維のシグナルが観察された。さらにアクチン線維の重合を阻害するサイトカラシンを作用させるとそれぞれに特徴的な形態が消失した。またDcdc42活性化型を過剰発現させた神経突起はサイトカラシンを作用させない場合に比較して濃度依存的に伸長する傾向があったが、Drac1活性化型を過剰発現させた神経突起にはその傾向がなかった。これらの結果は、Drac1の活性化がアクチン線維の強い重合を引き起こし、神経突起の柔軟性を低下させて神経突起の伸長能力を阻害するのに対し、Dcdc42活性化は神経突起の先端において葉状突起様構造や仮足様突起の形成を促進することで神経突起の伸長を阻害するものの、伸長能力そのものを阻害しているわけではないことを示唆した。さらに神経回路形成における機能を見るために、生体の中枢神経系の表現型を比較した。その結果、Dcdc42の活性化とDcdc42の不活性化は異なった表現型を示し、活性化の場合の表現型はroundabout(robo)変異体の表現型に類似していた。これらの結果は、Roboを介する成長円錐内でのシグナル伝達の下流に主にDcdc42が機能しているという可能性を示している。
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