外性器形成過程のメカニズムが興味深い点は、体幹部より伸長-分化する付属器官(appendage)としての形成メカニズムにある。Appendageとは、体幹部より発生する器官であり、代表的なものとして肢芽や外性器、フィン(fin)等が含まれる。 本研究においては、分子進化発生学的に付属器官の起源としてlimb-フィン-交接器いずれにも関連しうる、一部の魚類交接器の発生メカニズムに注目し研究を進めた。外性器形成プログラムのグランドプランを解明するためにも、交接器として機能している魚類ガンブシア(カダヤシ)のゴノポディウム(アナルフインの転化した構造)の解剖学的特徴、実験動物としての検討、更に形態形成と遺伝子の働きの解析準備段階としての遺伝子クローニングを行った。 まずガンブシアのゴノポディウムの伸長過程を観察し、通常孵化後ゴノポディウムの伸長、分化には数週間かかることが明かとなったので、タンク内水中にエチルテストステロンを外部から加える事により、過程を短縮させ、実験系として効率をあげる事に成功した。引き続いて我々が世界で初めて明らかにした外性器の形成のために重要な上皮性、及び間葉性の遺伝子群クローニングを試み、その結果Shh(ソニックヘッジホッグ)遺伝子、アンドロジェンレセプター(AR)などをクローンした。それらは各々ゴノポディウム伸長中の上皮、及び間葉に発現する事が世界で初めて明かとなった。今後これらの知見を受けて、これらの制御因子群がいかに機能しているか、機能検定系の開発を試みる予定である。またその後ShhやFGFといった制御因子群がホルモン系等の如何なる制御下についても解析を進めていく予定である。
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