Evx2遺伝子は2番染色体上にあるHoxDコンプレックスから8Kbの近傍に連鎖するホメオボックス遺伝子である。これまでin situハイブリダイゼーション或はレポーターアリルを使用し、その発現を明らかにしてきた。その発現は胎児期において、大きく二つの特徴に分類が可能である。その初期発現においては胎生9日目にHoxDコンプレックスにおけるtemporal colinearity(時間的共線性)に従い、Hoxd13とほぼ同時期に、体軸後方で発現を開始する。その後、他のHoxD遺伝子群と異なり、胎生10日に中枢神経系、特に小脳原基において強い発現を開始する。そこで、そのEvx2遺伝子の発生、殊に脳形成における役割を検証する為、ES細胞を用い、現在ノックアウトマウスの作成を行っている。ここでは大腸菌由来のβ-ガラクトシダーゼの遺伝子をEvx2の開始コドンからin-frameに挿入したもの、及びβ-ガラクトシダーゼをもたないものの両方を作成している。現在両変異ともキメラの作出に及んでおり、germ lineへの貢献を確認し、F1プロジェニーが得られている。 また、Evx2の中枢神経系、脳における発現を促進するエンハンサーはEvx2の3'側の遠位に存在すると考えられており、発現プロファイルの検討から、そのエンハンサーのHoxd13プロモーターへの作用をブロックする活性が二つの遺伝子間8KbのDNA領域にコードされていることが可能性として考えられた。そこで、その活性領域をより詳細に検討するため、ターゲッティドトランスジーンの手法を用い、活性DNAをEvx2遺伝子の下流に挿入する実験を行った。現在までに、4種類の重複した断片を挿入したES細胞、及びマウスを作出してきた。これらの結果により、当該活性が、1.5Kbの範囲に存在することを示すことができた。
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