研究課題
細胞にとって、タンパク質の存在状態の移り変わり(生成・成熟・輸送・品質管理・分解など)の適切な管理は、生存の基本的な要件である。本特定領域研究では、これを「タンパク質の一生」と題して研究を行ってきた。本特定領域では、ゴードン会議のような集中的な全体班会議を年1度おこない、インフォーマルで貴重な情報交換の場としてニュースレターを年2回発行してきた。一方で班員にはなるべく負担をかけず、研究推進に集中できるよう配慮してきた。今までのところ、期待通りの研究成果が得られており、「タンパク質の一生」の全局面で意義の大きい発見が生まれてきている。その結果、何人かの班員の研究室は、文字通り世界をリードする研究グループに成長した。今年度における具体的な成果をいくつか列挙する。AAA+プロテアーゼFtsHの結晶構造解析に成功し、新規のタンパク質分解反応モデルを提示した。ミトコンドリアの膜透過に関与する新規構成因子Tam41がTIM23複合体のアセンブリーと機能構造維持に係わることを発見した。IRE1-XBP1経路によって制御されている小胞体関連分解構成因子としてEDEMに続いてDerlin-2を同定した。サイトゾルにおけるタンパク質品質管理の問題として、リング状シャペロニンCCTが、polyQタンパク質の凝集を阻害することを明らかにした。polyQの凝集がCCTによって制御されること、またpolyQ凝集による細胞死もCCTによって制御されることをも明確に示し、CCTがpolyQの凝集の核形成のレベルで作用しているらしいことを明らかにすることができた。本年度で本特定領域は最後を迎えるが、この5年間は総括班全体として意義のある成果を数多く発表することもでき、当初の目標をほぼ達成することができたと自負している。
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