昨年度、酵母生細胞によるアミノ酸の取り込みが液胞アミノ酸取り込みを反映することに基づいて、液胞アミノ酸トランスポーター遺伝子欠損株の一次スクリーニングを行った。本年度は液胞膜小胞のアミノ酸輸送活性を直接測定することにより、アミノ酸トランスポーターに関わる遺伝子の働きを明らかにすることを目的とした。その結果、YMR088c遺伝子破壊株ではアルギニン、リジン、ヒスチジンの液胞取り込み活性が低下すること、YBR293w遺伝子破壊株では主にリジン、ヒスチジンの取り込み活性の低下、YCL069w遺伝子破壊株では主にリジン輸送活性の低下が認められた。しかしながら、これらの遺伝子破壊株の液胞膜小胞によるカルシウムイオンやチロシンなどの輸送活性にはほとんど変動は見られなかった。これらの遺伝子産物のアミノ酸配列に対して系統樹解析をおこなった結果、これらの遺伝子群が、薬剤/H+アンチポーターファミリーの中で一つのサブファミリーを構成しており、これらの遺伝子は塩基性アミノ酸に対して選択的なトランスポーターをコードすることが明らかになった。YMR088c遺伝子破壊株に対して低コピー数プラスミドによりYMR088c遺伝子を形質転換することにより、アルギニン、リジン、ヒスチジンの輸送活性のいずれもが回復した。またYMR088c遺伝子に対して、そのカルボキシル末端にGFPグリーン蛍光タンパク質を付加した融合遺伝子を作製した。GFP融合YMR088c遺伝子は、部分的ではあるがYMR088c遺伝子欠損を機能相補し、また、蛍光顕微鏡観察より液胞膜上に局在することも明らかになった。本研究により、新たに酵母液胞塩基性アミノ酸トランスポーター遺伝子群が同定され、今後の植物などにおける関連する液胞トランスポーター遺伝子同定への足がかりの一つを築くことができた。
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