非法律的で複数中心的な政策決定の問題に裁判所がいかに対処すべきかいう問題は、「市場経済への移行国」では中心的な課題ですらある。グローパリゼーションの下での司法改革とは、要するにローカリティの再発見であり、グローパリゼーショーンによって破壊されていくものの復元とそれの社会への埋め戻しに重点を移動すべきであり、その意味ではグロパリゼーションとは逆説的コンテクストでの考察を必要としている。自国法への反省的契機と法整備支援のパラダイム転換に向け、これまでの法整備支援の到達点をベトナムにそくして研究協力者から報告を受けた。立憲主義的な枠組の中に伝統的価値体系を併存させている「オセアニア方式」がこの関連で注目されるが、これからの法整備支援においては、これにも依拠しつつ人権観念の脱国民国家化や総じて国民国家型統治様式の正統性の揺らぎの反面で展開する多中心主義的な法の機能の探求に向けた考察を深化させていく必要がある。人権や価値体系の問題は避けて通るべきではないが、そのための方法論的検討を行っている。さらに法整備支援を学問的ディシプリンとして植立する必要があることから比較研究に着手している。ここから、法と政治の関係、固有法と移植法、伝統と近代の二項対抗形式の考察だけでなく、それ自体が対象国の社会に内在するシステムに対応できる「等身像」の枠組が必要であるとの認識が生まれつつある。以上の問題意識から法整備支援に一定の方法論的蓄積があるオーストラリアのシドニー、メルボルン、オーストラリア国立大学の法学部等において意見交換と今後の研究上の協力を求めるための打ち合わせを行った。また早稲田大学比較法研究所とも共同しつつこの研究のための拠点とするためのコンピュータ整備等を行った。研究協力者の協力を得て目下、ベトナムに関しての法整備状況と慣習法の関係を調査するための準備的な検討を行っている。
|