近年、社会主義体制から市場経済体制に移行しつつあるアジア諸国は、市場経済化に相応しい法体制を整備するために、外国とりわけ日本の知的・人的支援を求めている。日本政府は1996年以降、ベトナム、ラオス、カンボジアなどに対する法整備支援を開始したが、その法整備支援の実際のなかで、法整備支援の理念とは何か、どのような法分野に対して支援を行うべきか、というような基本的な諸問題が問われてきた。本領域研究においては、実際に行われつつある法整備支援事業を学問的に検討し、法整備支援学の構築を目指してきた。 本班では、アジアの体制移行諸国の法整備、司法制度改革の現状と課題を、土地私有・利用をめぐる問題を通して解明することを目標とし、アジア諸国の学術機関との共同研究、国際シンポジウムの開催、現地調査の実施などを行ってきた。 これらの研究の過程で明らかになった問題や研究成果を報告書『法整備支援と市場経済化(土地と利用)』(戒能通厚、松本恒雄、糊沢能生編)として刊行した。本書は、ベトナムおよび中国における土地利用をめぐる法律問題の現状と課題を明らかにしたものである。今後、これらの成果を踏まえて、さらなる研究が展開されることが期待される。
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