研究概要 |
本研究は、アレルギー反応に係わる肥満細胞、記憶機能に係わる脳神経細胞などをマイクロチップ中で培養し、これらの細胞をマイクロチップ中で培養し、これらの細胞の機能と応答を評価する。限られた空間内で高機能細胞の培養と維持を行うため、容器壁への微細構造の付加や表面修飾、温度や培養液条件などのマイクロ環境制御を可能とするマイクロシステムを構築することを目標として行った。 1.PDMSマイクロ流路内の動物細胞を用いたアレルギーセンサ RBL-2H3マスト細胞をチップ上で培養して、アレルギーセンサに応用することを試みた。PDMSを用いてマイクロ流体構造を作り、そのなかで細胞を培養した。この時、PDMs表面を親水性に変換することが、細胞の長期培養に必要である。アレルゲンの刺激により、ヒスタミンとそれに付加した蛍光色素を放出した。色素からの蛍光を検出することで、アレルギーセンサに応用できる。 2.神経細胞チップによるドラッグスクリーニング リアクター部は一辺500×500μm深さ200μmのものを24×52=1248個を基板上に集積化した。ニワトリの胚から取り出した脳神経細胞を,種々のペプチドとともにリアクター内で培養した。ペプチドに誘導され神経突起を生じた細胞にKCI刺激やCa^<2+>レセプター阻害剤を与え、それにより変化する細胞内Ca^<2+>の変化をCa^<2+>指示薬であるFLUDO3-AMを使って観察した。その結果、細胞ネットワークにKCI刺激を与えた時のCa^<2+>の放出による蛍光強度の変化が観察された。 3.マイクロ流路内の神経細胞培養 微細加工技術を用いて格子状に連なったマイクロ流路を作製し、そこに電極を挿入した64チャンネルの細胞応答測定システムを作製した。そして、ニワトリの胚から取り出した脳神経細胞を培養して神経ネットワークを形成させ、電気化学応答を測定した。その結果、良好に神経細胞のネットワークが形成され、約4週間にわたって、細胞応答が観察された。また、P19肺性癌種においても、同様な結果が得られた。 4.細胞個別操作用チップ チップ上に個々の細胞を整列捕獲し、マイクロ電極で同時並列にエレクトロポレーションを行うことに成功した。
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