研究概要 |
本研究では,我々が独自に提案・開発しているモジュール型マイクロ化学デバイスである「化学IC」の開発を行っている.具体的には,1)マイクロポンプチップなどの流体制御デバイスの開発,2)化学ICチップを接続する新手法の開発、3)化学ICチップ群を用いた生化学応用,4)3次元微細加工であるマイクロ光造形法の進展を研究目標としている.領域内での主な研究成果を以下にまとめる. 1)密着性が高く,圧力損失と逆流のない新型パルプを提案・開発し,液体・気体両者を安定輸送,かつ高耐久住のマイクロポンプチップを作製した.7時間にわたり無細胞蛋白合成を行うことに成功した.ポンプやバルブも含めてマイクロ化する本研究は,テーラーメード製薬・体内埋込型デバイス応用を現実とする. 2)モジュールコンセプトを基本とする,各種化学ICを結合した化学生化学実験を行うため,ホルダーユニットとシリコーンラバーフィルムを利用するカップリング手法を開発した.400kPa以上の高耐圧で液漏れが皆無なシステムを完成した. 3)生化学や細胞生物学において必要不可欠な前処理操作であるホモジナイズ処理を行う化学ICを開発した.本チップ内で圧電素子の振幅をホーンで拡大しキャビテーションを誘起、チャンバー内の細胞を破砕する. 4)外部からの赤外レーザビームを照射し,水中のマイクロマシンを遠隔駆動できる光駆動マイクロマシンを開発した.並進・回転2自由度の運動が可能なナノニードルを用い,光駆動実験、最大トルクの精密制御手法を実証した.5〜15fNの最大力制御を実験的に確認した. 5)1対10の能動分岐関係を持つ多方向分岐能動バルブチップの開発と実証実験に成功した. 6)グルコース濃度差により自律的にインスリン供給を行う浸透圧バルブをマイクロ光造形法で製作し,ラットを用いたin vivo実験により有効性を実証した. 7)生分解性特性を持つ樹脂を用いたマイクロデバイスの世界を拓くことを目的とし,生分解性樹脂用の新規3次元マイクロファブリケーションを開発した.分解能50ミクロンで数ミリ以下の3次元任意微細構造を高速試作できる.毒性溶媒をいっさい用いず,完全な生体適合性が保たれる.
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