研究概要 |
本研究では、高速かつ高性能に遺伝子やタンパクの機能評価を行える全く新しいセンシングシステムの開発を目的としている。まず、エストロゲン受容体およびAHCレセプターのリガンド結合ドメインを遺伝子工学的に調製し,これらを金電極上に固定化したバイオセンサを開発した。エストロゲンレセプター固定化センサーでは、多くの環境ホルモン物質の評価を行い,受容体への結合力に依存した応答を得ることに成功した。また、AHRレセプター固定化センサーでは,これに結合できる事が知られている人工リガンドにおいて応答が見られた。また、細胞内シグナル計測法としては,質量分析法を利用して2つの細胞間のシグナル強度を比較できる質量タグ型分子プローブの開発に成功した。この概念をまず,Aキナーゼに応用し,細胞溶解液での計測に成功した。さらに,幾つかのAキナーゼのアゴニストや阻害剤で,正確にシグナル強度変化を評価できることを見出した。この手法は,薬物スクリーニングなどに有用であると期待している。また,細胞シグナルとしての一酸化窒素の検出用プローブ分子を開発した。これは,ラジカル交換法という独自の概念に基づくもので,従来のEPR法に比べ格段の感度で一酸化窒素を計測可能であることが分かった。さらに、表面プラズモン共鳴(SPR)センサーに関しては、SPRマイクロセンサの評価法として、いままで、屈折率の異なる液体にSPRマイクロセンサを浸して応答を測定する「ディップ法」を使ってきたが、センサ表面に薄い空気層が形成される問題点があった。本年度は、SPRマイクロセンサに対してマイクロ流路系を導入し、その問題点を解決した。そして、水溶液測定で興味のある屈折率領域(屈折率1.33-1.40)に応答を示すSPRマイクロセンサを実現した。
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