コンポジット生体触媒の分子設計と進化工学

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13125101
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 教授 (50135597)
• 研究分担者: 堀池 喜八郎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80089870) ; 三浦 洌 熊本大学, 医学部, 教授 (70093466) ; 林 秀行 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (00183913) ; 島田 秀夫 慶応大学, 医学部, 助教授 (80095611) ; 広津 健 大阪市立大学, 理学部, 教授 (10047269)
• キーワード: コンポジット生体触媒 / キノヘムプロテイン / 構造活性相関 / フラビン / コバラミン

研究概要

本年度は、コンポジット生体触媒の設計の基礎をなす、酵素の構造活性相関の精密解析を中心に成果が得られた。まず谷澤らは、X線結晶構造解析によりグラム陰性細菌のキノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素の補酵素を同定し、これが新規なペプチド・ビルトイン型キノン補酵素、システイントリプトフィルキノンを含有することを見いだし、これを含む小サブユニットが4ヶ所の分子内チオエーテル結合を含む特異な構造を有することを明らかにした。堀池らは、カテコール2、3-ジオキシゲナーゼについて基質認識と酸素活性化の機構などを検討した。広津らは、ビスチジノールリン酸アミノ基転移酵素や、天然のコンポジット触媒と言える、ヘテロダイマーのイミダゾールグリセロールリン酸シンターゼ、ヘテロトリマーのキノヘモプロテインアミン脱水素酵素の構造を決定した。林らは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの反応機構に重要な役割を持つ基質結合に伴う補酵素-Lys258シッフ塩基の塩基性の上昇のメカニズムを追求し、基質結合に伴うGly38の主鎖のカルボニル基と脱ブロトン化状態にあるシッフ塩基の接近による静電的な反発がシッフ塩基のプロトン化を促進することなどを明らかにした。三浦らはD-アミノ酸オキシダーゼにおけるフラビン-タンパク質間の水素結合の役割などについて検討し、Thr317の側鎖のヒドロキシル基とフラビンのC(2)=0酸素原子の水素結合が、酸化型フラビンのLUMOおよび、還元型フラビンのHOMOのエネルギー準位を下げ、酸化的半反応の必須の中間体「紫色中間体」を安定化させることなどを示した。虎谷らは、代表的なコバラミン関与酵素であるジオールデヒドラターゼが、どの様にしてラジカル触媒反応を促進しているかについて、X線構造解析、部位特異的変異や量子計算に基づき考察した。

研究成果

• [文献書誌] Hirota, S.: "Spectroscopic obsevation of intermediates formed during the oxidative harf-reaction of copper/topa quinone-containing phenylethylamine oxidase"Biochemistry. 40・51. 15789-15796 (2001)
• [文献書誌] Datta, S.: "Structure of a quinohemoprotein amine dehydrogenase with an uncommon redox cofactor and highly unusual crosslinking"Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 98・25. 14268-14273 (2001)
• [文献書誌] Mizuguchi, H: "Strain is More Important than Electrostatic Interaction in Controlling the pKa of the Catalytic Group in Aspartate Aminotransferase"Biochemistry. 40・2. 353-360 (2001)
• [文献書誌] Haruyama, K: "Structures of Escherichia coli Histidinol-Phosphate Aminotransferase and Its Complexes with Histidinol-Phosphate and N-(5'-Phosphopyridoxyl)-L-Glutamate : Double Substrate Recognition of the Enzyme"Biochemistry. 40・15. 4633-4644 (2001)
• [文献書誌] Okada, K: "Structures of Esherichia coli Branched-Chain Amigo Acid Aminotransferase and Its Complexes with 4-Methylvalerate and 2-Methylleucine : Induced Fit and Substrate Recognition of the Enzyme"Biochemistry. 40・25. 7453-7463 (2001)
• [文献書誌] Ikushiro, H: "A water-soluble homodimeric serine palmitoyltransferase from Sphingomonas paucimobilis EY2395T strain. purification, characterization, cloning, and overproduction"T. Biol. Chem.. 276・21. 18249-18256 (2001)