研究概要 |
1.好熱菌Thermus Thermomophilus HB8のホモプロトカテク酸2,3-ジオキシゲナーゼ(HPCD)の結晶構造とその触媒機能および物理化学的性質を明らかにした。 2.カテコール2,3-ジオキシゲナーゼ(Mpc)と2,3-ジヒドロキシビフェニール1,2-ジオキシゲナーゼ(BphC)の詳細な反応動力学と結合実験を行い、関連パラメータを精密測定した。これらの結果と結晶構造の比較から、C3置換基と活性部位タンパク質側鎖との相互作用が、BphCではEA複合体形成を助け、Mpcでは基質の解離促進に働くことが分かった。 3.Mpcの活性部位への基質結合速度は置換基の電子吸引性と負の相関を示すこと・EA複合体の安定性は置換基の立体的な効果を受けること・フェノール誘導体(拮抗阻害剤)とのEI複合体の安定性は置換基の電子吸引性と正の相関を示すことを明らかにした。これらの結果から、酵素へのカテコールの結合はEI複合体類似の1座配位中間体を経る多段階反応であるという仮説が得られた。 4.MpcのEA複合体への酸素分子の結合・活性化速度が基質置換基の電子吸引性と負の相関を示すことを示し、カテコールから酸素分子への1電子移動が酸素活性化に重要であることを証明した。Mpcの酸素結合部位は、カテコール環とHis199,A202,Leu155,Phe191で構成され、BphCではロイシンがバリンに代わり疎水性ポケットが広くなり、HPCDではロイシンがアスパラギンに代わり疎水性が部分的に壊されていることが分かった。これらの結果から、各酵素の酸素分子との反応性の特徴が構造からはじめて説明できた。 5.C4置換カテコールはBphCの基質にならず、酸素依存性にBphCを失活させることを発見した。構造解析からC4置換カテコールが基質とは異なる仕方で鉄イオンに2座配位することが分かった。これらの結果から、基質による自殺反応の反応機構の仮説(活性中心鉄イオンは2価から3価に酸化、酸素分子は0_2^-として遊離)が得られた。 本研究で、extradiol型酸素添加酵素の基質認識機構と酸素分子の結合・活性化の設計原理がほぼ明らかになり、合理的に指向進化させる基礎が得られた。
|