研究概要 |
昨年度までの研究成果より,周期的濃度変動条件において,プロピレンの部分酸化による二量化反応生成物であるベンゼンの収率・選択率が飛躍的に向上することがわかったが,分析方法として赤外分光光度計を用いたために定量的な検討が行えず,副生成物についての知見が得られなかった.そこで,今年度は,2系統(TCD用とFID用)×12本の採取管を持つ自動分取装置およびガスクロを用いて,短い時間の反応の過渡挙動を測定することを試みた.触媒としてBi_2O_3-P_2O_5(Bi/P=2)を用い,変動条件ではプロピレン濃度40%(He希釈),酸素濃度20%(He希釈)としてBang-Bang操作(無気相酸素条件)を行い,定常操作では各濃度を半分とした. 定常操作下(触媒量0.1g)での実験を行ったところ,環化生成物ベンゼンとその中間体として考えられる1,5-ヘキサジエンが生成していること,また,CO_2,H_2Oなどはベンゼンなどに比べてずっと生成量が多いことがわかる.他にアクロレイン,エチレンなども痕跡量の生成が認められた. 一方,周期的濃度変動操作下での実験を行い,自動分取装置を用いて実際の一周期内での濃度の時間変化測定を実現することができた.結果として重要なことは,CO_2,H_2Oの生成量が定常操作時に比べ大きく減り,ほとんど観察されなくなっていることである.一方,ベンゼンや1,5-ヘキサジエンも時間平均生成量は減っているもが,CO_2やH_2Oの減少ほど顕著ではない.また,濃度波形の変化から,1,5-ヘキサジエンがベンゼン生成の前駆体であることが確認できた.さらにプロピレン供給時よりも酸素供給時において,触媒層の温度が上がることが認められた.以上の結果から,無気相酸素酸化が選択率向上に有効であることが実際の一周期の分析においても再確認された.
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