研究概要 |
不飽和を含むカルボニル化合物(アルデヒド,ケトン,エステル)の選択還元反応を,環境負荷の少ない反応試剤のみを用いて行う反応場の設計を試みる。還元試剤として2級アルコールを用い,有毒な廃棄物を副生することなく選択的にカルボニル化合物の還元が可能となる。平成13年度は,還元反応に有効な固体触媒の探索に重点を置いた。これまでの研究結果から触媒の活性成分としては,ZrおよびSnが優れていることがわかっている。ZrおよびSnを分散させる有効な多孔性担体を検討した。結果として,酸・塩基性質を持たない中性のSiO_2や活性炭担体が優れていることがわかった。これは,ケトン,アルデヒドの反応物に共通した結果である。一例を列挙すると,不飽和アルデヒドであるクロトンアルデヒド(CH_3CH=CHCHO)はZr/SiO_2触媒上で2-プロパノールを還元剤として用いると,不飽和アルコールであるクロチルアルコール(CH_3CH=CHCH_2OH)に選択的に還元された。選択率はほぼ100%であった。特に表面積の高いメソポーラスシリカMCM-41(約1,000m^2/g)と活性炭(約3,000m^2/g)が優れていた。 反応原料濃度を動的に変化させる平成14年度以降の実験に先立ち,反応の速度論を検討した。反応物がアルデヒドの場合,アルデヒドに0次,アルコールに1次となり,触媒表面はアルデヒドで覆われていることが示唆された。触媒をあらかじめアルデヒドやアルコールで前処理し反応を行った結果,表面アルデヒド被覆率が低いと飽和アルデヒドなどの好ましくない副生成物が反応初期に生成することがわかった。表面アルデヒド被覆率を高めると反応速度は低下するが不飽和アルコール選択率はほぼ100%であった。反応中の触媒表面状態を制御することが選択性を向上させるために重要であることがわかった。以上の2点の結果を基に平成14年度は,反応原料濃度を反応中動的に変化させカルボニル基の還元に最も適した表面状態を探索する予定である。
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