昨年度、亜硝酸性窒素NO_2^-がPd/Cにより迅速に分解し、室温、常圧の懸濁触媒系でも10分間程度で完全に分解し、分解速度は強くpHに依存し、酸性領域で著しく速く、零次のため極微濃度まで迅速分解を継続するが、塩基性域では一次分解の挙動を示すことを見出した。一方、酸性領域下でNOの水素還元を行うと毒性が強いNH_2OHの生成が懸念されており、本反応においても重大な問題となる。昨年度指摘したように、昨年度は同定できなかった分解生成物および窒素収支を中心に本年度は検討した。実際にpH=5のNO_2^-の分解では5ppm以下の微量のNH_2OHを検出したので、NH_2OHの生成と分解挙動を検討した。微量NH_2OHの検出には8-ヒドロキシキノリンによるインドキシンの発色を吸光分析することが有効であった。100ppmのNH_2OHを用い、Pd/C触媒で水素還元の挙動を検討したところ、NH_2OHは塩基性域で速やかに分解することが明らかになった。つまりpHが5.8〜8.6の水質基準内でNO_2^-の分解を行うとNO_2^-の迅速な分解と、NH_2OHの生成を抑えられることがわかった。このように、亜硝酸性および硝酸性窒素の分解における窒素収支を明かにすることは、本分解反応の有効性を示すために重要である。Cu/Pd/C触媒によるNO_3^-の分解に関して、NO_3^-、NO_2^-、NH_2OH、NH_4^+、N_2およびN_2Oの追跡を、特にガス成分については本研究備品として導入した四重極質量分析計用いて行った結果、重要な成分の見落としはなく、良好な窒素収支であることがわかった。
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