研究概要 |
昨年度に調製法を確立したシリカ被覆Ptナノ粒子を,異なる温度で空気焼成することによりシリカ細孔径の制御を試みた。しかし,焼成温度を上げるにつれてシリカ細孔容積は大きく減少しものの,平均細孔径はそれほど大きく変化しなかった。ただし,この測定法では物質分離において重要な貫通細孔の大きさを調べることはできないので,これらのナノ粒子の物質分離能を調べることとした。それらのシリカ被覆Ptナノ粒子の水素/一酸化炭素分離能を化学吸着特性から評価した。その結果,H2吸着量は焼成温度によらずほぼ一定であるが,CO吸着量は焼成温度とともに減少し,550℃焼成でほぼゼロとなった。したがって,550℃焼成のシリカ被覆Ptナノ粒子は水素を選択的に透過するシリカ膜を有することがわかった。次に,より大きい分子の分離能について検討するため,メタンとイソブタンの燃焼反応特性を調べた。メタンとイソブタンをそれぞれ別々に反応させた場合には,メタンを選択的に燃焼することはできなかった。しかし,両者を共存させて反応させたところ,いずれのナノ粒子でもメタンを選択的に燃焼することがわかった。通常の含浸法触媒ではイソブタンの方を多く燃焼するため,シリカ被覆Ptナノ粒子の反応性は極めて特異と言える。さらに,シリカ層厚さの異なる試料の反応特性を調べたところ,シリカ層が薄い(19.5nm)方がメタンをより選択的に燃焼した。シリカ層はメタン/イソブタン分離能を示さなかったため,この結果はPtがメタンを選択的に燃焼したことを示している。このようにシリカで被覆されたPt表面が,従来報告されていない特異な触媒能を発現することを見出した。
|