研究概要 |
つぎの3項目に分けて研究成果を記す。 (1)パルスノズルによる分子錯体の生成法の制御:trans形とgauche形の2つの回転異性体がある1,2-ジクロロエタンを温度計にして、CsI基板上に凍結された異性体の分布比を希ガスの背圧を変化させたところ、1,2-ジクロロエタンの平衡温度は60Kの温度範囲で制御が可能であった。さらにN_2O二量体とCH_3I二量体の赤外吸収スペクトルをDFT及びMP4計算に基づき帰属した。 (2)大気微量成分-水錯体の生成、検出、反応:水錯体研究の第一段階として、1:1錯体を効率よく低温マトリックス中に生成する方法論の確立と、その赤外吸収スペクトルから分子種の帰属と、錯体構造の推定手順の確認を行った。試料としては、既に1:1錯体がマイクロ波分光法により詳細に決定されているSO_2-H_2Oを採用した。また、O_3-H_2O錯体は可視光を照射した際、O_3単体のバンド強度がまったく変化しないのとは対照的に、O_3-H_2O錯体バンドは特異的に減少することが明らかとなり、錯体特有の反応が進行していることが分かった。 (3)現在立上げ中の分子錯体光反応解析装置:平成13年度の主要設備品として分子錯体光反応解析装置を製作している。1)高分解能測定が可能なこと、2)高感度測定が実現できること、3)今後新たな装置が組み込めるように発展性を持たせることなどを装置設計の基本方針とした。分解能0.04cm^<-1>、S/N200,000:1で測定可能な赤外吸収分光計を購入し、その分光計にあわせたマトリックス・真空チェンバーを製作した。マトリックス基板に機械的振動が伝播するのを極力防いだ低雑音化も、装置の高感度化を保障する条件と考えられる。また、試料の吹きつけ、光照射が最適な配置で実施できるように、回転可能な基板を装備した。
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