研究概要 |
初年度に合成したトリポダンドの機能についてさらに詳細な検討を加えるとともに、その類縁体を各種合成し、その機能について検討を行った。まず基本骨格となるトリポダンドはNi(II)やCo(II)とも錯形成し、Fe(II)やRu(II)錯体と同じようなラセン構造をもつことがX-線結晶構造解析より明らかとなった。またFe(II)錯体とRu(II)錯体がアミノ酸メチルエステルの塩酸塩をゲストとして認識することを見いだした。しかしフェネチルアンモニウム塩酸塩やβ-アミノ酸およびγ-アミノ酸に対しては全く認識能をこのメタロホストは示ささず、極めて高いα-アミノ酸選択性を有していることが明らかとなった。アンモニウム基とエステル基が協同的にこのホストと相互作用していることがこの原因であると考えられる。また、末端にビピリジンをもつポリエーテルをベンゼン環の2,4,6-位に導入したホストを合成してFe(II)との錯形成を調べたところ、二本のエーテル鎖で形成される環の内側をもう一本の鎖が通り抜けた構造をもつ錯体が定量的に生成した。すなわちこれまでの擬クリプタンド型とは異なり、認識場がふさがれた構造をしていることがわかった。その結果、鉄のない時、この分子はアンモニウムイオンを取り込むが、鉄錯体となることでこれを放出する新規な負のアロステリーを示した。またシツフ塩基部を複数もつ多座配位型の鎖状分子を合成し、これが非常に協同的に亜鉛イオンと錯形成して環状構造をもつ三核錯体を定量的に与えることを見いだした。一つの亜鉛は環の中央に位置するが、これは定量的にランタニドによって置換されることがわかった。つまりこれまで全く例のないヘテロ多核錯体の合成法である。
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