ラセン構造をもつ含ルテニウム擬クリプタンドの錯体部が置換不活性であることを利用して光学分割に成功し、その分光学的性質について調べた。純粋なエナンチオマーの収量が少なかったため、認識能を調べることはできなかったが、この光学分割は置換活性な鉄錯体では実現できなかったことである。また、ポリエーテルの代わりに尿素部位を有するトリポダンドを合成し、相当する鉄錯体の合成にも成功した。この擬クリプタンドは尿素部位が水素結合部位として働いて、塩化物イオンに対する高い親和力をもつことを見いだすとともに、X線結晶構造解析によりその認識様式についても明らかにした。さらに、アニオンとカチオンの両者に対して認識能をもつデュアル認識型メタロホストも合成することができた。この分子は酸化反応によって金属を解離させることができるので、レドックス応答性の構造変換が可能である。また錯体部位を二つもち、2ナノメートルの大きさをもつビス擬クリプタンドの合成に成功し、各種カチオン性ゲストに対する親和力についても明らかにした。また、カリックスアレンを基本骨格にもち、金属の添加によってゲートが開閉して認識能が制御できるメタロゲート分子システムの開発にも成功した。 シッフ塩基を複数もつ鎖状配位子から定量的に得られる亜鉛三核錯体が、生物学・医科学において重要な、高いカルシウム選択性をもつことを見いだした。今回の手法はこれまでに例のない新規なものである。また、蛍光性部位を導入した同様な鎖状配位子を合成したところ、これが亜鉛に対して蛍光応答性をもつことも見いだし、新しい蛍光センサーとしての可能性を示すことができた。現在、以上の成果については複数の論文として投稿中、あるいは投稿準備中である。
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