分子インプリント法によるレドックス活性高分子ゲルの合成と分子認識への応用

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13128203
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 幅上 茂樹 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 講師 (30252266)
• 研究分担者: 山本 智代 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80314045) ; 中野 環 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (40227856) ; 覚知 豊次 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80113538)
• キーワード: 分子インプリント法 / 光学活性ポリマー / α-(アルコキシメチル)アクリル酸 / 不斉識別能 / 高分子ゲル / らせん / ポリメタクリル酸エステル / 不斉アニオン重合

研究概要

これまでに、らせん状光学活性ポリメタクリル酸エステルを用いた分子インプリント法により、不斉認識能を有する高分子ゲルの構築が可能であることを明らかにしている。本法による、より効果的ならせん状キラルナノ空間の構築を目的として、以下の2点について検討した。
1.共重合モノマーとして、メタクリル酸の代わりに種々のα-(アルコキシメチル)アクリル酸を用い、キラルゲルの構築を行った。本モノマーは、カルボキシル基に加え、α位の置換基がテンプレートポリマーと相互作用することが予想され、従って、より精密にらせん状空間を構築することが可能であると考えられる。これまでの研究で、テンプレートとして、有効でないことが明らかとなっている(+)-ポリ(メタクリル酸ジフェニル-2-ピリジルメチル)を用い、検討を行った結果、α-(ベンジルオキシメチル)アクリル酸誘導体、特にベンジルオキシ基のパラ位にBr-やMeO-基を有するモノマーが、キラルゲルの構築に有効であることがわかった。得られたゲルは種々の低分子化合物に対する不斉識別能を示し、モノマーのパラ位の置換基が認識能に大きな影響を与えた。
2.より優れたテンプレートポリマーの構築を目的として、側鎖に重合反応性基を有するらせん状光学活性ポリマーの合成を行った。すなわち、側鎖にビニル基を導入することにより、ゲル合成の際に成長ラジカルと反応し、テンプレートと生成しつつあるゲルとの相互作用を強めることが期待される。新規モノマー、メタクリル酸1-(ρ-ビニルフェニル)ジベンゾスベリルを合成し、光学活性なアニオン重合開始剤を用いて重合を行った結果、側鎖に反応性のビニル基を有する1方向巻きのらせん構造を有するポリメタクリル酸エステルの合成に成功した。

研究成果

• [文献書誌] S.Habaue, O.Ikeshima, H.Ajiro, Y.Okamoto: "Surface Structure Control of Macroporous Silica Gel by Atom Transfer Radical Polymerization"Polym.J.. 33・11. 902-905 (2001)
• [文献書誌] S.Habaue, M.Morita, Y.Okamoto: "Anionic Polymerization of Macrocyclic α-(Alkoxymethyl)acrylates Leading to Novel Vinyl Polymers with Crown Ether-type Side Chains"Macromolecules. 35(in press). (2002)
• [文献書誌] S.Habaue, T.Seko, Y.Okamoto: "Asymmetric Oxidative Coupling Polymerization of Optically Active Tetrahydroxybinaphthalene Derivative"Macromolecules. 35(in press). (2002)
• [文献書誌] S.Habaue, M.Morita, Y.Okamoto: "Stereospecific Anionic Polymerization of α-(Alkoxymethyl)acrylate Derivatives Affording Novel Vinyl Polymers with Macrocyclic Side Chains"Polymer. 43(in press). (2002)
• [文献書誌] T.Nakano: "Optically Active Synthetic Polymers as Chiral Stationary Phases in HPLC"J.Chromatogr.A. 906. 205-225 (2001)
• [文献書誌] T.Nakano, Y.Okamoto: "Helical Polymers : Synthesis, Conformation, and Function"Chem.Rev.. 101. 4013-4038 (2001)
• [文献書誌] 中野 環: "不斉ラジカル重合(Asymmetric Radical Polymerization)"高分子論文集. 58・8. 411-426 (2001)
• [文献書誌] T.Nakano, K.Tsunematsu, Y.Okamoto: "Synthesis of Single-Handed Helical Poly(1-dibenzosuberyl methacrylate) via Radical Polymerization in the Presence of an Optically Active Cobalt(II) Complex"Chem.Lett.. 42-43 (2002)
• [文献書誌] T.Kubota, T.Kusano, C.Yamamoto, E.Yashima, Y.Okamoto: "Cellulose 3,5-Dimethylphenylcarbamate Immobilized onto Silica Gel via Copolymerization with a Vinyl Monomer and Its Chiral Recognition Ability as a Chiral Stationary Phase for HPLC"Chem. Lett.. 724-725 (2002)
• [文献書誌] T.Wakita, B.Chankvetadze, C.Yamamoto, Y.Okamoto: "Chromatographic Enantioseparation on a Wall-coated Open Tubular Capillary Column Containing Covalently Bound Cellulose (3,5-Dichlorophenylcarbamate) as Chiral Selector"J.Sep.Sci.. 25. 167-169 (2002)