研究課題/領域番号 |
13130201
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 寛 東京大学, 物性研究所, 教授 (20127054)
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研究分担者 |
瀧川 仁 東京大学, 物性研究所, 教授 (10179575)
後藤 恒明 東京大学, 物性研究所, 教授 (30005962)
上田 和夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (70114395)
加倉井 和久 日本原子力研究所, 先端基礎センター, 主任研究員 (00204339)
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キーワード | フラストレーション / 磁性 / 低次元量子スピン系 / 磁気秩序 / 軌道秩序 / 量子相転移 |
研究概要 |
物質開発研究では、3次元フラストレート系スピネル物質ZnV_2O_4において軌道秩序によるフラストレーションの解消現象を観測した。また、擬1次元磁性体NaTiSi_2O_6においてスピン・パイエルス的相転移に伴うTi-Tiの2量体化を観測した。 核磁気共鳴研究では、2次元直交ダイマー系SrCu_2(BO_3)_2において、交替磁化が磁場によって誘起される現象を見出し、その原因となるジャロシンスキー・守谷相互作用の大きさを決定した。また2次元3角格子磁性体Cs_2CuBr_4について、磁化プラトーの出現に伴い磁気構造の整合・不整合転移が起こることを見出した。 強磁場研究では、Cs_2CuBr_4の強磁場磁化過程を400mKにおいて再測定し、bおよびc軸方向において1/3と2/3の磁化プラトーを観測した。また、1/2の磁化プラトーが観測されたパイロクロア格子系物質CdCr_2O_4では磁歪の測定を行い、結晶がプラトー領域で[111]方向に大きく縮むことを発見した。この系の磁気-格子相互作用は小さいが、フラストレーションの効果よって増長されていることを見出した。 中性子散乱研究では、スピン一重項の基底状態を持つTlCuCl_3における圧力誘起磁気秩序においてスピン方向の再配向を含む新奇な逐次磁気秩序の過程を明らかにした。磁化プラトーを示すS=1/2二次元三角格子反強磁性体Cs_2CuBr_4の磁気構造解析を行った。トライマー鎖物質Pb_3Cu_3(PO_4)_4について磁気励起の観測に成功した。 理論的には、スピネル化合物LiV_2O_4の示す遷移金属化合物であるにもかかわらず重い電子系的振る舞いの起源についてスピン、軌道、およびそれらの結合したモードの揺らぎが重要であることを指摘した。SrCu_2(BO_3)_2において実現している直交ダイマー系の量子相転移について、実験の概況を整理し、その理論的理解の全体像について現時点での研究の状況を総合報告にまとめ、出版した。
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