研究分担者 |
野尻 浩之 岡山大学, 理学部, 教授 (80189399)
大久保 晋 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 助手 (80283901)
鏑木 誠 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (40093504)
稲垣 祐次 神戸大学, 自然科学研究科, 助手 (10335458)
菊池 彦光 福井大学, 工学部, 助教授 (50234191)
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研究概要 |
今年度は量子性が強いと期待されるS=1/2の系に問題をしぼり,ダイヤモンド鎖とデルタ鎖のモデル物質について試料評価と強磁場ESR測定をすすめた。また他の系についても強磁場ESR測定をすすめた結果,以下の成果をえた。 1)ダイヤモンド鎖のモデル物質であるアズライト単結晶について詳細なX線構造解析をおこなったところ,天然鉱物ゆえの不純物マラカイトの混入がみつかり,マラカイトを分離した。その結果Cu^<2+>のESR信号としては非常に線幅が広く,強磁場ESRでなければ観測できない吸刈又がアズライトの本質的な吸収であることが明らかになった。強磁場ESRの温度変化測定で,gシフトが観測され,現在実験結果の解析をすすめている。 2)デルタ鎖のモデル物質である[Cu(bpy)(H_2O)][Cu(bpy)(ma1)(H_2O)](ClO_4)_2単結晶の結晶軸をX線構造解析で決定し,X-band ESRによる角度依存性測定をおこなったところ結晶がtwinをもつことが明らかとなった。低次元系に特有のgシフトおよび低温における線幅の発散が観測され,これとデルタ鎖内に存在するフラストレーションとの関係を検討中である。 3)BaCu_2(Si_<1-x>Ge_x)_2O_7についてX-band ESRおよび強磁場ESR測定をすすめた。その結果x=0,1の物質についてはT_N以上で低次元性を反映する振舞いは観測されなかったが,T_N以下の反強磁性共鳴の観測から磁気異方性とDM相互作用にかんする情報がえられた。さらにx=0.65単結晶では,強磁性的鎖間相互作用と反強磁性的鎖間相互作用がちょうど打ち消し合って,DM相互作用をもつ一次元反強磁性体特有の線幅とg値の温度依存性が観測され,押川-Affleck理論で非常にうまく説明されることが明らかとなった。 4)S=1スピンラダーのモデル物質と考えられるBIP-TENOのX-band ESR測定から低次元性を反映したマジックアングルや吸収線形の振舞いが観測された。さらに低温のgシフトが昔からよく知られているNagata-Tazukeの振舞いと異なることがわかった。 5)圧力下強磁場ESRに関しては,圧力較正の候補物質としてルビーを検討し,圧力によりCr^<3+>のD項の変化が観測され,圧力較正に使える見通しがたった。また圧力下強磁場ESRをS=1/2スピンラダー物質といわれているCHpCに対しておこなったところ圧力による欠陥サイトなどによる新しい吸収は観測されず強度の温度依存性も磁化率に対応することが明らかになり,圧力下で磁化率にみられる低温での増加は本質的な現象であると考えられる。
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