研究概要 |
今年度の研究計画にのっとりダイヤモンド鎖などS=1/2の系を中心に強磁場ESR測定などをすすめた。また圧力を導入した装置開発もすすめ,以下の成果をえた。 1)ダイヤモンド鎖のモデル物質であるアズライト単結晶の磁化率と磁化過程は非常に大きな異方性を示すことがわかった。そして磁化過程数値計算と比較することにより,異方性の起源としてDzyaloshinsky-Moriya(DM)相互作用の存在が磁化過程の異方性を説明可能であることが明らかとなってきた。また,その磁化過程の異方性と対応して1.8Kの強磁場ESRで観測される直接遷移の周波数-磁場依存性も異なっていることが明らかとなった。 2)DM相互作用によるStaggard磁場をもつS=1/2一次元反強磁性体BaCu_2(Si_<1-x>Ge_x)_2O_7(x=0.65)の極低温強磁場ESR測定から磁場誘起ギャップが観測され,この系にも押川-Affleck理論で期待されるブリーザー励起の存在が示唆された。またX依存性から鎖間相互作用の効果を議論した。 3)デルタ鎖のモデル物質である[Cu(bpy)(H_2O)][Cu(bpy)(mal)(H_2O)](CIO_4)_2単結晶の強磁場磁化過程を極低温で測定し,定性的に理論計算による磁化過程と対応していることを明らかにした。 4)サファイアをピストンに使ったピストンシリンダー型圧力セルを開発し,これを用いて強磁場ESR測定をおこなった。そして3.5kbarまでの測定を量子相転移を示す三角格子反強磁性体CsCuCl_3についておこない,その圧力効果を明らかにした。
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