研究概要 |
強磁場ESR測定を中心に以下の成果をえた。 1)ダイヤモンド鎖のモデル物質であるアズライト単結晶の強磁場ESRを各結晶軸に関してFaradayおよびVoigt配置で観測し,その吸収強度依存性からDzyaloshinsky-Moriya(DM)相互作用のDベクトルについての情報をえることに成功した。 2)これまでCu-Be合金とサファイアを使用していた圧力セルの改良をおこなった。具体的にはセルによりかたいNiCrAl合金を用い,ピストンにはジルコニアを用いることによりこれまでの最高圧力3.5kbarを6.5kbarに更新することに成功した。この新しい圧力セルでダイマー系KCuCl3の圧力下強磁場ESR測定を4.2Kでおこない,スピンギャップが660GHz(常圧)から200GHz以下(6.5kbar)に減少することが直接的に観測された。理論より8kbarくらいでギャップが消失し,新しいAmplitude modeの観測が期待される。 3)一次元スピンギャップ系Pb_2V_3O_9の強磁場ESR測定を低温でおこなった。この系は磁化測定や比熱測定から7Kのギャップをもち,TlCuCl_3と同様の磁場誘起磁気秩序が指摘されている系で,強磁場ESRの周波数および温度依存性から粉末試料にも関わらず磁場誘起磁気秩序相のダイナミクスを議論することに成功した。 4)強磁場ESRの高分解能をいかして一次元ジグザグ系MCuP_2O_7(M=Sr, Pb)のスピンダイナミクスを議論することに成功し,そのgシフトがNagata-Tazuke理論と異なることを明らかにした。 5)本特定領域のとりまとめの国際シンポジウムQSS04を葉山で開催し,多数の成果報告をおこなった。
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