研究概要 |
研究初年度の要素ソフトウェア開発と機能確認を受けて,2年目の本年度は解析対象として設定したMDDRデータベースから,ドーパミンのアンタゴニスト活性を対象として解析を行うとともに,解析の全過程を効率的に遂行するための環境構築に重点をおいて研究を進めた.以下に,主要な研究内容を項目に分けて述べる. 1.MDDRデータベース中のドーパミンアンタゴニスト活性を有する化合物1364種から,Dl-D4の4種のレセプターに対するアンタゴニスト活性に特徴的な化学構造の認識と,これに関連するリスク要因の発見を課題として設定した. 2.塩および同一化合物の除去、物理化学的特性値の算出(HOMO, LUMO, dipole, ClogP)およびフラグメントの生成を行った.なお、この前処理過程を効率的に遂行するためのソフトウェア環境を別途構築した. 3.データスケープ探索機能を備えたカスケードモデルによる解析で、各レセプターに特徴的な部分構造を認識することができた.この結果は創薬の専門家から、未知の結果を多く含むとして高い評価を受けた. 4.TFS(topological fragment spectra)を属性とし,ニューラルネットワークを用いて4種の受容体ごとに活性の有無を識別するモデルを作成したところ,テスト群においても80%を越えるこれまでにない高い精度を得ることができた.この結果はTFS記述子群の高い記述能力を示している. 5.ドーパミン活性化合物以外に1万種の雑多な活性を持つ化合物群を加え,D4活性化合物の1番目の化合物エントリーを対象として類似性検索を行ったところ,上位10分子の検索結果中で9種はドーパミン活性を持つ化合物であったが,最後の一つは高血圧治療薬であった.この薬品が,副作用としてドーパミン拮抗作用を持つ危険性,また反対にこれを統合失調症の治療薬として発展させられる可能性を指摘できた.
|