研究概要 |
最近申請者は,核酸塩基およびリン酸部位に保護基を必要としない新しい核酸分子構築法である,「塩基部無保護H-ホスホネート法」を開発した。核酸には水酸基,アミノ基,リン酸基といった反応性に富む官能基が多数存在するために,化学合成に際してこれらの官能基に適当な保護基を導入しておく必要がある。特に,従来の核酸合成法では,アミノ基とリン酸基には塩基性条件下除去される保護基が導入されているために,保護基の除去条件,すなわち塩基性条件下で分解してしまうような核酸誘導体は合成できなかった。たとえば,修飾塩基を含む核酸分子やインターヌクレオチドのリン酸ジエステル結合を修飾した非天然型の人工核酸,反応性に富む官能基を有する機能性核酸誘導体の多くは,塩基性条件下で不安定であり,従来法では合成できない場合が多い。そこで,申請が開発した保護基を用いない核酸分子構築法を用いれば,過酷な保護基の除去反応を行う必要がなくなるので,これまで合成できなかった新しい構造と機能をもつ様々な核酸誘導体が合成可能となる。 本年度は,無保護法の特徴を最大限に生かし,N-アシル化されたDNAフラグメントの一般的合成法を確立し,N-アシル基を有するDNAフラグメントと相補的な塩基配列を持つオリゴマーとの二重鎖形成能を詳細に調べた。この研究結果から,核酸の新しい機能化の手段として,アミノ基にアミド結合を介して種々の官能基を導入できる可能性を開拓することができた。また,機能性官能基を有する新規核酸誘導体の合成反応として,無保護法による光クロスリンク能を有する2-アジドデオキシアデノシンを含むオリゴマーの一般的合成法を確立し,二重鎖形成能や光クロスリンク能を詳細に調べた。今後,2-アジドデオキシアデノシンを含むオリゴマーは,DNA/DAN相互作用,DNA/RNA相互作用やDNA/タンパク質相互作用を調べるための新しいツールとして期待される。
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