研究概要 |
申請者は,これまでに不斉リン原子を有する核酸類縁体の立体選択的な新規合成手法(オキサザホスホリジン法)の開発を行ってきた。これまでに明らかになっているオキサザホスホリジン法の問題点は,(1)モノマー合成におけるジアステレオ選択性が93-96%であり,100%立体化学的に純粋なモノマーを得るためにはシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製が必要であること。(2)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるモノマーの単離収率が62-77%と改善の余地があること。(3)固相合成における平均縮合収率が97-98%と改善の余地があること。(4)固相合成における縮合反応のジアステレオ選択性が94-95%と改善の余地があること,などである。本年度はこれらの問題点を克服可能とする新しい不斉補助基の開発を行った。また,オキサザホスホリジン法を用いるホスホロチオエートRNAの立体選択的合成反応についても検討した。 モノマー合成反応のジアステレオ選択性を向上させるために,種々の不斉補助基の骨格を検討したところ,新規の二環式ホスフィチル化剤と2'-デオキシヌクレオシドの反応が高立体選択的に進行し99:1以上のジアステレオマー比で得られることがわかった。さらに,得られた新規二環式モノマーとヌクレオシドの縮合反応はやはり99:1以上のジアステレオ選択性で進行し,目的とする立化学的に純粋な2量体を合成することができた。今回新たに開発した不斉補助基をRNA誘導体の立体選択的合成に適用したところ,ほぼ完全な立体選択性で対応するRNA誘導体を合成することができた。本年度の成果は,従来のオキサザホスホリジン法を飛躍的に改良するものであり,立体が制御された長鎖核酸類縁体の合成に極めて有効であると思われる。
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