研究概要 |
今年度は,DNA二重鎖上でのクロモフォアの空間配置および距離とエネルギー移動との関連について明らかにするため,20残基DNAの5'末端にアクセプタークロモフォアとしてヘキサクロロフルオレセイン(Hex)を導入し,ドナークロモフォアとなるフルオレセイン(Flu)をそのDNA,あるいは相補鎖の任意の場所に導入したコンジュゲート群を合成し,二重鎖状態でのクロモフォア間の距離とエネルギー移動との関連について検討した。 Hexを1本のDNA鎖(A鎖)の5'末端に有し,Fluを同一鎖(A鎖)上で5残基離れた位置にFluを導入したもの(A6Flu1Hex+B),同様に8残基離れた位置にFluを導入したもの(A11Flu1Hex+B),および相補鎖(B鎖)上で6残基離れた位置にFluを導入したもの(B15Flu+A1Hex),同様に相補鎖(B鎖)上で16残基離れた位置にFluを導入したもの(B5Flu+A1Hex)を調製し,クロモフォア・アレイを構築した。これらを二重鎖形成状態で蛍光スペクトル測定を行った。これらの結果より,予想していた通り,クロモフォア間の距離が長くなるほど光エネルギー移動の効率は低下する傾向が認められた。しかし,ドナークロモフォアがアクセプタークロモフォアと同一鎖にある場合と相補鎖上にある場合とでは,エネルギー移動効率の値に大きな差が見られ,同一鎖にある方がエネルギー移動効率が高くなった。また,同じ10残基を介した場合であっても,以前に報告していたような,10残基の5'末端にクロモフォアを導入してマトリックスDNA上で配列化させたパターンよりも,同一鎖に導入した場合の方がエネルギー移動効率が高くなることが明らかとなった。
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