研究概要 |
21世紀東邦フォーラム,インテリジェントファイバー先導調査研究委員会等における凡そ2年に及ぶ議論に基づき,インテリジェントファイバーや分離膜の開発へ向けた研究の根幹として「分子キャビティーの高度制御によるスマートメンブレンの創成」を設定し,平成13年,16名の構成員のもと4年のプロジェクトをスタートした.少人数の研究者集団で効率よくきめ細かに推進できるよう心がけ,研究者間の議論及び協力体制が緊密にした結果,本プロジェクトのミッションを達成できたものと自負している.本プロジェクトは,物質分離に必要な要素として高分子膜中に特定のサイズ・形状の分子キャビティーをいかに創成,キャラクタライズ,シミュレート,分離性能を評価するかという概念に基づいて A班 「スマートメンブレンの創成」 B班 「スマートメンブレンのキャラクタリゼーション」 C班 「シミュレーションによるスマートメンブレンの分子設計と機能予測」 D班 「スマートメンブレンの分離性能と評価」 の4班を組織し,班間の交流及び共同研究も活発に行なった.C班のシミュレーション結果や予測が各班の研究に有効に反映され,新たな研究課題が具体化したことは本研究の連携状況をそのまま物語っていると言える.また,本プロジェクトによって,高分子物理化学から膜分離に至るまで学際領域の基礎を築き,分子キャビティー合有の高分子分離膜による分離科学の新概念を打ち立て,膜設計の指針を確立した.なお成果公表の一つとして,Elsevier社の「Journal of Molecular Structure」誌に,本プロジェクトの研究成果の多くを網羅した「Smart Membranes and Molecular Cavity」と題する特集号を企画し,平成17年に発刊した.本プロジェクトの成果が高分子膜科学,高分子科学への発展に大いに貢献すると同時に膜工業,高分子工業に寄与することは疑いない.
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