研究概要 |
液体供給DMFCに適した電極・スタック構造を明らかにすることを目的として、DMFC用MEAを作製し、燃料電池評価装置に組み込み、発電特性におよぼす操作条件、電極構造的因子の影響を調べた。 MEA作製ではPt-Ru/C触媒(田中貴金属工業,TEC61E54)にNafion5%溶液を混ぜたインクをカーボンペーパー上に塗布し、アノードとした。カソードにはPt/C触媒を用いた。これらをNafion112にホットプレスし、MEAとした。これをリブ付きのカーボンプレートで挟み、アノードにメタノール水溶液を供給し、カソードには空気あるいは酸素を供給してDMFCとしての発電試験を行った。常圧下、30℃〜100℃で、メタノール濃度、流量などの操作因子や触媒塗布量などの電極構造的因子が電流-電圧特性、電極インピーダンス等におよぼす影響を調べた。また、電解質表面に金属薄膜を直接析出させる方法により、触媒担持法の検討の基礎試験も行った。 酸化剤として空気および酸素を用いたときの電流-電圧特性の比較では、電流-電圧曲線としては、電池温度が30℃では両者に差は見られないが、80℃では酸素供給にすることにより出力の上昇がみられた。この温度ではカソード反応領域への酸素供給速度が律速していると考えられる。電流-電圧特性におよぼすメタノール濃度の影響では、100mA/cm^2程度の低電流密度域では1.0wt%の低濃度のものがより高い電圧を示し、既報の結果と一致した。1.0wt%および3.2wt%では高電流密度における急激な電圧低下がみられ、これらの場合カーボンペーパーおよび触媒層を通してのアノードでのメタノール供給が律速となっていると考えられる。実際に利用される電流密度の領域では反応関与物質の移動抵抗が大きいことから、移動抵抗の小さい電極構造が望ましいことが分かった。90℃において0.12W/cm^2程度の出力密度が得られた。
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