研究概要 |
江澤は非可換幾何学の物理的検証及び応用として量子ホール系を解析した.量子ホール系では電子のxy座標は非可換になり,連続体上の場の理論は存在しない。この系に内部対称性を導入して,対称群がSU(N)拡大W_∞になる事を導出した.非可換幾何学上の演算子を定義し,クーロン相互作用する非可換電子に対する有効ハミルトニアンを求めた.これは低エネルギー極限でSU(N)非線形シグマ模型になるが,この模型に現れる係数(stiffness)を代数的に初めて導出した.さて,ランダウ準位は内部対称性のためにN個の準位に別れる.この内,k個の準位が埋まっている量子ホール状態はグラスマン多様体G_<N,k>で記述されることを指摘した.この帰結として,二層量子ホール系の占有率v=2における位相的励起は,グラスマンG_<4,2>ソリトンであることを論証した.グラスマン・ソリトンはかなり昔から知られていたが,実際の物理現象に現れることを示したのは私の研究が世界で最初である.成果は国際会議(Hawai, USA, Dec.1-5,2002)で発表し,4編の原著論文として国際的著名誌に発表した. 綿村は非可換空間上での古典解の解析を行った.非可換空間で古典解を求めるには代数的方法を使う必要があるが,この方法の基礎となっているのがトーラス上のNahm dualityと呼ばれる対称性である.非可換ユークリッド空間のインスタントン解の構成に適用されているADHM構成は,開いた空間の場合へのNahm duality変換の拡張と考えられるが,非可換の場合にはこのように単純に理解できない.結果的には何らかの非可換空間上のバンドル間のdualityになっているはずであり,この構造を解析し理解することは非可換空間上の場の理論の本質に迫ると考え,非可換インスタントンのduality変換での性質を解析している.特に非可換インスタントンにおけるADHMの逆変換に相当するReciprocityについてその部分的結果を国際会議(Beijin, China, 4-7 2002およびChennai, India, Jan.10-15,2003)で発表した.
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