研究概要 |
江澤は非可換幾何学の観点から量子ホール系の量子場理論を構築し,その期待値をとることにより古典場理論を構成した.量子ホール系は最低ランダウ準位に束縛された電子の作る世界であるが,この電子のx座標とy座標は交換しない,という著しい特徴を持つ.その結果,電子が内部対称性SU(N)を持つ場合,量子ホール系の対称性はW_∞をSU(N)拡大したW_∞(N)で与えられる.本年度は非可換空間における位相的ソリトンの研究を行った. 従来,位相的ソリトンは古典的励起としてのみ知られていた.本研究の最初の成果は,空孔励起のW_∞(N)回転として非可換ソリトンの量子力学的状態を求めたことである.即ち,位相的ソリトンを量子力学的に構成したことになる.この結果を用いて,非可換ソリトンの位相的荷電密度と実際の電荷密度との間に厳密な関係式を導いた.更に,非可換ソリトンの励起エネルギーを解析した.物理的なクーロン相互作用に対して,近似解を求め励起エネルギーを計算した.励起エネルギーの外部磁場依存性を実験結果と比較して,本研究で得られた成果の正当性を検証した.これらの研究成果は6編の原著論文として国際的著名誌に発表した. 綿村は弦理論に現れる新しい非可換性の一つである非反可換超空間上のゲージ場の非自明な配位の研究を行った.このような配位の研究には,非反可換超空間上で非自明なバンドルを構成する必要がある. この問題は空間の次元が4の時にはADHM構成法により解けることが分かっている.そこで,非反可換超空間上のゲージ理論にADHM構成法を拡張し,トポロジカルに非自明なインスタントン解を構成しモジュライの性質を調べた.我々の構成法により,インスタントンに伴うフェルミオンゼロモードの同時構成が可能になり,ボソン的モジュライとフェルミオン的モジュラィの変形に対する応答を見ることができた.研究成果は2編の原著論文として国際的著名誌に発表した.
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