研究概要 |
当研究班の今年度の研究活動および研究成果は以下の通りである. (1)格子カイラル理論における指数定理(藤原) overlap Dirac演算子の指数と格子ゲージ場の位相的配位の関係を解析し、十分滑かな格子ゲージ場に対し連続理論で期待される指数定理が成立すること、粗いゲージ場では格子固有の現象が現れ、連続理論の指数定理が全く成立しないことを確かめた。また,2次元の場合に一様な磁場に対してエルミート的Wilson-Dirac演算子のスペクトルを解析的に研究し,有限の周期格子上でoverlap Dircc演算子の指数を厳密に計算する方法を与えた. (2)格子カイラルフェルミオン、およびカイラルなゲージ理論の定式化に関係した研究(菊川,鈴木) Large N reduced modelにおけるフェルミオンの定式化として、overlap Dirac operatorを用いるアプローチで、ある特定のクラスのゲージ場に限定して、非自明なカイラルアノマリーの効果が出現することを厳密に示した。 (3)Yang-Mills理論における質量次元2を持つ新しい型の複合演算子の真空凝縮(近藤) Yang-Mills理論において,質量次元2を持つ複合演算子の真空期待値として新しい型の真空凝縮の存在を提唱した。従来の次元4のゲージ不変なグルーオンの真空凝縮に対して,次元2の真空凝縮はゲージ不変ではないが,BRST対称性を持つ。この真空凝縮は,グルーオンやゴーストに有効質量を与えると期待される。実際,演算子積展開の計算結果はそれを示唆している。この真空凝縮をあたえる質量次元2の複合演算子は乗法的にくりこみ可能であり,くりこまれたBRST変換の下でも不変になることを示した。これを用いる事で,明白にローレンツ共変にゲージ固定されたYang-Mills理論において,クォークの閉じ込めを論じる事が出来る。実際,Wilsonループ期待値の弦表示を通して,弦定数が,次元2の真空凝縮に比例する事を示した。
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