1.超膜理論と行列弦理論(分担:米谷):超膜理論は、M理論への最重要な手掛かりとみなされているが、その力学の解明に関しては、10年位大きな発展がなされていない。しかし、超膜理論の正規化としての行列模型が、M理論の非摂動的定義に対する有力候補として再解釈がなされている。この行列模型の双対変換として、行列弦模型が提案されているが、それと超膜理論との関係はこれまであいまいであった。米谷は、行列弦理諭が11次元方向に巻きついた超膜理論から正規化により自然に得られることを初めて示すことに成功した。この結果は、曲がった時空における行列弦理論の定式化や、M理論にとって重要な11次元超重力の導出にとって重要な意味を持っていると予想され、その方向に向けた研究を現在進めている。2.不安定DブレーンとN=2時空対称性の自発的破れの研究(分担:米谷):前年度からの継続した研究課題として、不安定Dブレーンのもとにおいて起こるN=2時空超対称性の自発的破れに関する研究をさらに進め、弦の世界膜の力学自身の性質として、超対称性の自発的破れの機構を分析し、自発的破れと開弦のスペクトル全体とのあいだの密接な関係を明らかにした。この結果と低エネルギー有効理論との関係は、ゲージ群が可換群の場合にすでに示しているが、本年度はその非可換群の場合への拡張を大学院生の原旅人の博士諭文へ向けた研究として進めた。3.格子上の超対称ゲージ理論(分担:加藤):超対称性を持つゲージ理論の非摂動的ダイナミックスは、場の理諭のしての興味のみならず、超弦理論におけるブレインの力学の解明にとっても重要である。これまで、双対性などによって、幾つかの場合に真空の構造などが明らかにされてきたが、振幅などを含む具体的な物理最の計算や超対称性自体の破れなどを議論するには、より実際的な計算法の確立が望まれ、格子上での定式化が昔から試みられてきたが、幾つかの困難があり成功していなかった。この問題に対し、全く新しい見方でアプローチし、定式化の可能性を探った。その結果、超対称性の元になるフェルミ的対称性を見いだすことに成功し、現在連続理諭の超対称性との関係を考察中である。
|