1)平成16年度の研究計画の一つは、WILSON有効作用に対するくりこみ群の発展方程式である、POLCHINSKI方程式の解析方法を研究することであった。これについては、有効作用のtree展開の枠組みに基づき、発展方程式のなかで、一粒子可約な寄与のなかから既約部分を生成するものを分離して、実質的にLegendre有効作用の発展方程式に現れる部分を取り出す処方を見いだした。この研究成果は、論文にまとめ出版した。 2)研究計画の主要部分は、カイラル対称性などの大局的対称性について、通常の対称性を保持しない正則化の下で新たな有効対称性を定式化し、この対称性を持つWILSON有効作用を構成すること、また、有限個の相互作用項に対するPOLCHINSKI方程式を解析することであった。この課題については、対称性の保持に必要な微分項はすべてとりいれ、それ以外の微分項について展開するという新たな微分展開を考えた。この展開のleading項については、対称性を保持したまま発展方程式の解析が行えることを示した。この結果は、基礎物理学研究所研究会「場の量子論の基礎的諸問題と応用」(2004年12月)でポスターによる発表を行い、現在、論文としてまとめている。 3)格子理論における超対称性の研究においては、いわゆる「市松格子」上でのstaggered fermionに関する対称性の分析をおこなった。これについての研究結果は、シカゴで開催された「LATTICE 2004」(2004年6月)や基礎物理学研究所研究会「格子ゲージ理論の新しい発展と芽」(2004年12月)などで発表した。 4)上記の研究計画の効果的な遂行のため、国内、国外の研究グループとの研究打ち合わせ、各種研究会への出席・成果発表をこない、研究支援者1名を雇用した。
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