研究概要 |
空間的に非一様な非平衡状態における物理量の振る舞いは、宇宙初期を含め多くの分野で理解が必要である。Kusnezov氏とともに温度勾配がある格子模型で物理量がどのような空間的な依存性を持つかを第一原理より近似なしに計算して求めた。そして,その性質を解析し、ダイナミックスに支配される部分と一般的に成り立つべき関係とを明らかにした。 超弦理論は量子重力を含む基本的な理論としてもっとも有力な候補の一つである。宇宙項は素粒子のスケールで考えると非常に小さく、超弦理論では超対称性が無くても宇宙項を摂動理論全次でゼロとするような場合があるのではないかという考え方が以前よりあり、そのような理論の真空の有力候補が提唱されていた。Eric D'Hoker, D.H.Phong氏らとともに有力候補と考えられていた非対称オービフォルドでの宇宙項を計算した。その結果として少なくとも今まで提唱されてきた場合では超対称性が無い場合には宇宙項がゼロとならないことを示せた。 中性子星の中心部の状態は、核物質ではなくクォーク物質である可能性が高い。クォーク物質の状態は、ほぼ自由なクォークガス状態、カラー超伝導状態、それにわたしが提案しているカラー強磁性状態がありうる。これらのどれが実現しているかを調べた。そのために、それぞれの状態の自由エネルギーを計算し最低エネルギー状態を決めた。その時考慮すべき条件が3つある。カラー中性条件、電荷中性条件、および、β-平衡条件である。これらは、中性子星内部に特有の条件であり、それが状態の実現しやすさにどう影響するかを、調べた。その結果、中性子星内部ではバリオン数密度が通常核物質の数倍程度で、核物質は、カラー強磁性状態のクォーク物質に相転移する。さらに、密度を上げるとカラー超伝導状態、とくにCFLと呼ばれる3つのフレイバーが関係する超伝導状態となることが分かった。 多重レンズ効果をの連続極限を考察して非一様宇宙を伝播する光の振る舞いを調べた。この宇宙での重力レンズ効果を考慮した角度距離の定義を与え、それが光学的スカラー方程式を満たすことを示し、重力レンズ効果での物理量と光学的スカラー理論の物理量間の関係を明らかにした。
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