研究概要 |
1.超弦理論の構成的定式化の模型であるIIB行列模型について、その時空をあらわすメカニズムを解明するべく、モデルを平均場近似およびそれを発展させた近似手法を用いての解析を試みた。現在も主にその手法について適用範囲や効率的な計算方法を確立するべく研究を継続中である。このようなアプローチは広く強結合系、スピン系などでとられていたものであり、物理的な直観が得られやすいため、近似手法としての有用性ばかりでなく、行列模型の系の性質をこれまで我々が良く知っている物理系との対応においてより良く理解し、ひいては行列模型の正しい物理的な解釈へと繋がるものと期待される。 2.5次元反ドジッター時空に埋め込まれた3+1次元ブレインを、我々の住む4次元時空と考える立場に立てば、(a)宇宙項の大きさ、(b)重力定数と電弱相互作用の質量スケールの間の階層性,に対し無理のない解答を得る可能性がある。一方で、5次元反ドジッター時空と5次元球の直積空間はIIB超弦理論からD3ブレイン集積による空間として得られ、5次元反ドジッター時空での場の理論を考察することの正当性は超弦理論から裏付けられる。このような視点から、確かめるべき重要なポイントは、本来5次元にある重力場及び10次元から引き継がれたその他の場で5次元反ドジッター時空にあるもののうちどれだけが、ブレインに閉じこめられて我々の世界に存在する場として認識されるのかと言う点である。最初に(i)反ドジッター時空に許されるスカラー・タキオンがブレインに進入し局在することを確かめた。これはミンコウスキ時空構造を持つブレインの不安定性につながり、このときはブレイン解自身を求める段階でタキオンを処理する必要のあることを示唆している。(ii)次に、5次元で質量を持つベクトル場が質量のないゲージ場としてブレインに局在することを確かめた。現在は、より現実的な曲がった時空を持つブレイン上での場の局在の問題を調べている。
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