研究概要 |
本研究課題は,スマトラにおける赤道大気レーダ(EAR)を中心にして熱帯積雲対流活動を総合的に観測し,積雲スケールからグローバルスケールに至る対流活動の階層性ならびに対流圏起源の大気波動の振舞いを明らかにすることを目的とする.そのため,風ベクトルの鉛直プロファイルを観測するEARと同時に気温,水蒸気密度,降雨の鉛直プロファイルや,3次元対流活動,更にそれらのリモートセンシング観測を支援する様々な地上測器が必要である.平成13年度は,EARと同時に観測を行う観測システムの整備並びに設置・調整を実施した.観測機器としては,ラジオメータ(水蒸気密度分布),光学式雨量計(高時間分解能・高精度の雨量計)および電波・音波探査装置(RASS)を整備した.RASSの整備は平成14年度も継続して行う. 上記の機器整備と併せて,海洋大陸域を中心に,熱帯域の対流活動特性について以下の調査・研究を行った.(1)対流活動の特徴を捉えるために,衛星データから得られる熱帯対流雲の日周変化とその地域依存性,雷活動,雨滴粒径分布特性など調査研究した.赤道域降水の平均的日変化は,陸上では対流性降雨には夕立のピークが顕著だが,層状性降雨は夜間により強く,その時間差は大きい.一方海上では,対流性降雨も層状性降雨も早朝にピークを示し,ほぼ同期して日変化する.しかし海洋大陸域では,陸上の層状性降雨の夕立との時間差が平均より短い.(2)衛星データを用いて雷活動の調査を行い,陸上では夏半球,海上では冬半球の中緯度で多く雷が発生すること,また日変化は,陸上では現地時間の15時ころに最大となることなどが明らかになった.(3)地上における連続観測結果から,雨滴粒径分布の季節変動度は,アジアモンスーン地域内においても大きな地域依存性を持つことが明らかになった.これらの結果について今後更に解析を行い,観測計画に反映していく.
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