研究概要 |
本研究課題は,スマトラにおける赤道大気レーダ(EAR)を中心にして熱帯積雲対流活動を総合的に観測し,積雲スケールからグローバルスケール,に至る対流活動の階層性ならびに対流圏起源の大気波動の振舞いを明らかにすることを目的とする.そのため,風ベクトルの鉛直プロファイルを観測するEARと伺時に気温,水蒸気密度,降雨の鉛直プロファイルや,3次元対流活動,更にそれらのリモートセンシング観測を支援する様々な地上測器が必要である.平成14年度末までに全ての観測機器の整備を終え,平成15年度にはそれらの機器の校正,データ公開を行った.更に平成16年3〜4月に実施する観測キャンペーン用に,Xバンドドップラーレーダーの設置調整を実施した. これまで取得してきた観測データや衛星データを用い,スマトラを中心とした海洋大陸における対流活動の特性解析を継続した.その結果:(1)対流活動の活発さの指標である雷活動は顕著な日周変化や季節内変動を示すこと,更に降水活動の活発さと逆相関を持つこと,(2)降雨システムは,季節内変動,スーパークラスター,メソ対流系,個々の積雲活動と繋がる階層構造を成すこと,(3)雲微物理過程の帰結である雨滴粒径分布は,対流活動や層状性降雨の成因に依存し,日周変化や季節変化を示すこと,などが明らかになった.これらの成果は,赤道対流による熱収支や大気波動励起の時間変動特性の解明に繋がり,赤道対流と上層大気の結合を調べる場合の基礎資料となる.また観測機能の強化のため,大気観測レーダーやRASSによる気温,水蒸気,雨滴粒径分布などの推定手法の開発を行った.
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