消化管における水チャネル機能と水輸送のダイナミックス

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13137204
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 成瀬 達 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50180550)
• 研究分担者: 長浜 真人 三重大学, 医学部, 講師 (50198355) ; 古家 園子 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (20096952) ; 石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 助手 (90303651)
• キーワード: 膵導管細胞 / 水輸送 / aquaporin / Na^+-HCO_3^-共輸送体 / CFTR / 介在部導管 / 小葉内膵管 / 水透過性

研究概要

膵臓は1日に約1.5Lの消化酵素に富んだアルカリ性の膵液を分泌する。消化酵素の分泌は膵臓の約85%を占める腺房細胞から分泌されるが、酵素分泌に伴う水輸送は膵液分泌の5〜10%であり、大部分の水は膵の僅か5%を占める導管細胞から分泌される。膵導管細胞では重炭酸イオン分泌によって形成される浸透圧勾配によって、水がaquaporin 1(AQP1)を介して輸送される。本研究では、昨年までに、ヒトの膵臓の免疫組織化学により、AQP1は、介在部導管から小葉内膵管にかけて基底側膜および管腔膜に多く発現しており、小葉間膵管ではサイズが大きくなるにつれて発現が弱くなっていくことを明らかにした。本年度は、重炭酸イオン分泌を担うNa^+-HCO_3^-共輸送体(NBC)およびcystic fibrosis transmenbrane conductance regulator (CFTR)とAQP1の発現部位の関係を検討した。NBCは、介在部導管、小葉内膵管、細い小葉間膵管の基底側膜に多く発現しており、主膵管上皮にも発現していた。CFTRは、介在部導管および小葉内膵管の管腔膜に発現しており、小葉間膵管では発現が弱かった。ヒトでは、介在部導管と小葉内膵管が主な水および重炭酸イオン分泌の場であると考えられた。また、CFTRの変異により重炭酸イオン分泌が障害されているΔFマウスの膵臓から小葉間膵管を単離し水チャネル機能を解析した。24-36時間培養し両端が閉じて管腔が閉鱒腔になった膵管を用いて、表層液の浸透圧を変えることによって、水透過性(osmotic water permeability)を測定した。ホモ接合体から単離した膵管の水透過性は、ワイルドタイプに比べて2倍以上に高かった。膵導管細胞においては、重炭酸イオン分泌が障害される時にはAQP1がup-regulationされると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Hayakawa T, Naruse S, Kim KH, Go VL.: "2nd international symposium : Frontiers in pancreatic research-from basics to clinic and exocrine glands, Japan-Korea."Pancreas. 26. e1-11 (2003)
• [文献書誌] Hayakawa T, Naruse S, Kitagawa M, et al.: "Clinical evidence of pathogenesis in chronic pancreatitis."J Hepatobiliary Pancreat Surg.. 9. 669-674 (2003)
• [文献書誌] Naruse S.: "Molecular pathophysiology of pancreatitis."Intern Med.. 42. 288-289 (2003)
• [文献書誌] Yamamoto A, Ishiguro H, Ko SB, Naruse S, et al.: "Ethanol induces fluid hypersecretion from guinea-pig pancreatic duct cells."J Physiol.. 551. 917-926 (2003)
• [文献書誌] Shcheynikov N, Kim KH, Ko SB, Naruse, S, Muallem S, et al.: "Dynamic control of CFTR Cl/HCO3- selectivity by external Cl.2004"J Biol Chem. (In press). (2004)
• [文献書誌] Naruse S, Ishiguro H, Suzuki Y, et al.: "A finger sweat chloride test for the detection of a high-risk group of chronic pancreatitis/"Pancreas. (In press). (2004)
• [文献書誌] Fujiki K, Ishiguro H, Ko SB, Naruse S, et al.: "Genetic evidence for CFTR dysfunction in Japanese : backgroud for chronic pancreatitis."J Med Genetics. (In press). (2004)