研究概要 |
脳の初期発生においては、脳の形態形成は神経上皮細胞の細胞増殖・神経分化に大きく影響される。鳥類以下の中脳では、背側由来の視蓋で細胞増殖が活発で大きく拡大するのに対し、腹側由来の被蓋では神経分化が進行する。したがって中脳の背側・腹側では細胞増殖と神経分化のバランスについて異なる制御を受けていると考えられる。底板で発現する分泌因子Shh(Sonic hedgehog)を中脳の片側全体に強制発現させると、翼板では活発な細胞増殖が抑制されて腹側タイプの神経分化が進み、被蓋へと分化することがわかっている。そこで予定視蓋における細胞増殖・神経分化に関与する因子を単離するため、中脳背側で発現するcDNAとShhを強制発現して腹側化した中脳組織由来のcDNAの間でのサブトラクションを行った。得られた277のcDNA断片の塩基配列を調べると、その中には中脳背側に特異的に発現することが知られている遺伝子(β-catenin, pleiotrophin, Pax3, EphA3など)が含まれており、サブトラクションが効果的に行われていることが確かめられた。50クローンについてその発現パターンを調べたところ、中脳背側に特異的に発現するものがいくつか同定された。今後引き続き発現パターンによる選別を進めるとともに、単離された遺伝子の機能解析をおこなったいく予定である。
|