研究概要 |
1.新規Cerberus/Danファミリー分泌蛋白Charonをコードする遺伝子の単離・機能解析を行った。charon遺伝子は、マウス後期結節の魚類相同器官であるクッパー腔周辺部に発現し、Nodal関連分子と結合・機能阻害することを明らかにした。機能阻害実験から、Charonは左右軸形成の初期段階において、機能していることを見出した。 2.初期背側シグナルに欠損を示す母性効果変異体tokkaebiの単離・解析を行った。tokkaebi変異体胚は、Wntカノニカルシグナル伝達経路に異常を有していた。原因遺伝子を、第16番染色体にマッピングした。 3.初期ゼブラフィッシュ胚においては、Wnt3aとWnt8が協調的に、前方神経形成の抑制・中軸組織形成の抑制・尾部形成に関与していることを見出した。尾部形成に関しては、Wnt3a/Wnt8の下流でcaudal関連遺伝子cdx1a, cdx4が必須な役割をしていることを見出した。 4.魚類・両生類の初期神経発生においては、原始神経の形成するプロニューラルドメインが、左右3本の領域(運動・介在・感覚神経に相当)として形成されることが分かっている。そのプロニューラルドメインの領域を制御する分子機構として、プロニューラルドメインの間に発現するher3,her9遺伝子が関与することを見出した。 5.前脳特異的に発現するzinc finger型転写抑制因子fez-likeの遺伝子欠損マウスを作成した。fez-like欠損マウスは、過剰行動運動を示し、海馬采・脳弓システムおよび視庄皮質路の形成異常を認めた。さらに、大脳皮質初期に形成されるサブプレート神経に形成に異常があることを見出した。サブプレート神経からの軸策を足場として視庄皮質路が形成されることが提唱されているが、fez-like欠損マウスは、この過程に異常が有すると考えられた。
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