研究概要 |
1,neo薬剤耐性遺伝子をOtx2遺伝子の第一イントロンに挿入することで、mRNA量が野生型に比べ顕著に低下したhypomorphic遺伝子座を作成した。実際、Otx2のhypomorph遺伝子座とnull遺伝子座とをもつ変異マウスでは顕著な前脳形成不全を示した。分子マーカーを用いた解析から、前方神経上皮の構造は一時的には発生するが、その後の前脳への特異化が正常に進行しないことが示された。さらに、実験発生学的手法である共培養実験を用いて解析した結果、Otx2遺伝子が前方神経上皮において前方神経稜からの誘導シグナルに反応するのに必須な遺伝子であることが明らかになった。 2,Otx2ヘテロ変異マウスはC57BL/6の遺伝的な背景でotocephalyと呼ばれる顔面頭蓋奇形を発症する。そこでどの量的遺伝子座(Quantitative trait locus)がOtx2と相互作用して顔面頭蓋奇形を発症させるのか、遺伝学的な手法を用いて解析した。多型マーカーを用いて染色体全体を検索した結果、第2番、10番、18番染色体上に5つの修飾遺伝子座が局在していることを明らかにした。これらの遺伝子座はヒトでの同様な疾患(単脳胞症や無顎症など)の原因遺伝子の候補となっていることが強く示唆される。 3,神経上皮は、誘導シグナル(Fgf8など)に対し、前後軸に沿って異なる応答性を持つことが知られている。今回、ニワトリ胚の過剰発現系を用いて、Six3及びIrx3が神経上皮の応答性にどのような役割を果たしているかを解析した。結果、Six3は終脳領域の応答性をIrx3は中脳領域の応答性を規定していることが明らかになった。さらに、Six3とIrx3は相互に抑制的に働くことでZona Limitansの境界形成に関与していることが示唆された。
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