1)頭部形成過程においてOtx2遺伝子と遺伝的に相互作用する遺伝子座の同定に成功した。0tx2ヘテロ変異マウスはB6マウスの遺伝的背景で顔面頭蓋奇形を発症するが、CBAマウスの遺伝的背景では発症しない。この種間の表現型の違いを利用し、顔面頭蓋奇形を発症させる修飾遺伝子座を検索した結果、2番と18番染色体上に修飾遺伝子座が存在していた。 2)マウスの前後軸回転がWntシグナルにより制御されていることを示した。軸回転異常を示すOtx2変異マウスなどでWntブロッカーである、mdkk-1遺伝子の発現が失われていた。そこで、Otx2遺伝子座にmddk-1をノックインしたマウスを作成したところ、Otx2変異胚で見られた軸回転の異常が回復していることを見いだした。 3)前方臓側内胚葉形成の分子機構を解明するため、マウス以外の、ヒト、ニワトリ、フグのOtx2遺伝子の前方臓側内胚葉特異的な発現調節領域を特定をした。これらの制御領域を比較し、欠失変異体や塩基置換変異体を持つtransgenic miceを作製することで、特異的な発現に必要なコアな塩基配列を決定した。 4)ニワトリ胚の過剰発現系を用いることで、Six3とWntシグナルは相互に抑制的に働くことを明らかにした。つまり、分泌性因子によるWntシグナルの遮断によって予定頭部領域にSix3が発現し、その後、Six3がWntシグナルを抑制し、2重にWntシグナルが遮断されことで、頭部前方が形成される。 5)視床神経核の特異性を規定する転写因子Sox14、Gbx2の発現制御機構を解析した。Gli1は高濃度Shhリガンド存在下でSox14を誘導し、Gli2はShhの高濃度、低濃度にかかわらずGbx2を誘導した。従って、Gli1、Gli2の発現パターンにShhの濃度勾配が重なることで、視床原基内の特定の位置にSox14、Gbx2を発現する神経細胞が産み出された。
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