研究概要 |
1,脊椎動物の中で最もゲノムサイズの小さいフグのゲノム領域を用いてOtx2遺伝子の発現調節機構を明らかにした。頭部形成過程においてフグOtx2遺伝子座70kbに渡ってエンハンサーを7カ所、非翻訳領域に同定した。また、同じ硬骨魚であるゼブラフィッシュにおいても保存されて機能することを見いだした。2、マウスの前後軸回転がWntシグナルにより制御されていることを示した。Otx2変異マウスで見られる軸回転異常は,Wntブロッカーである、mdkk-1遺伝子を導入することで回復した。また、Otx2遺伝子はmddk-1の遺伝子発現に直接正に関与していることをトランスジェニックマウスを作製することで明らかにした。3、昨年度までにトランスジェニックマウスにおいて、フグOtx2遺伝子の前方臓側内胚葉特異的な発現を支配しているエンハンサーを同定していた。この制御領域を用いて、硬骨魚類において哺乳動物の前方臓側内胚葉がどのような組織に対応しているのかを明らかにするために、トランスジェニックゼブラフィシュを作成した。4、Wntシグナル経路が終脳の領域化に果たす役割について、ニワトリ胚の強制発現実験系で検討を行った。その結果、Wntシグナルが終脳背側部を規定し、腹側部を抑制することが明らかとなり、またこの作用は、従来終脳の部域化を制御するとされたソニックヘジホッグの作用に先立って終脳原基をパターン化していると考えられた。5、前頭部を欠失する突然変異マウスheadshrinkerはSsdp1の発現低下が原因であることを見出した。またSsdp1はLim1-Ldb1-Ssdp1複合体の転写活性化能をつかさどるコアクチベーターとして、頭部オーガナイザーの1つである脊索前板の形成を制御し、前頭部の維持に関わっていることが示唆された。
|