研究概要 |
免疫寛容に関与しているとされているPD-1:B7-H1/B7-DC経路のT細胞免疫応答における役割を知るために前年度に作製した各分子に対するモノクローナル抗体を用いて検討した。その結果,PD-1レセプターを共有するものの,2つのリガンドB7-H1とB7-DCの発現細胞分布はかなりことなり,B7-DCが樹状細胞およびマクロファージに限定されているのに対して,B7-H1発現は,活性化T細胞,マクロファージ,樹状細胞の免疫細胞に加えて,上皮,血管内皮,癌細胞などの様々な組織細胞に発現誘導されることが示された。またサイトカインによる発現制御が異なることがマウスおよびヒトにおいても明らかになった。接触性過敏症,アレルギー喘息,移植,自己免疫疾患(NOD自己免疫性糖尿病,EAE,Lupus腎炎,炎症性腸疾患)などのマウス疾患モデルにおいて,抗PD-1,抗B7-H1,あるいは抗B7-DC抗体投与を投与し,in vivoにおけるこれら分子の関与を検討した。炎症性腸疾患モデルを除く疾患モデルにおいて,抗PD-1抗体投与によるPD-1経路阻害により,反応の増強(疾患の増悪)が認められたが,興味深いことにリガンドであるB7-H1あるいはB7-DCの関与については,抗体投与結果からは疾患モデルにより様々であった。この結果は反応に関与する局所あるいは2次リンパ組織における抗原提示細胞や組織細胞におけるリガンド分子発現の違いと,それらの細胞に同時に発現されるCD80/CD86などの他の補助シグナル分子発現との相互関係によりPD-1機能が影響を受けること,またPD-1以外の第2レセプターの存在の可能性などが考えられた。
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