• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2002 年度 実績報告書

アンチポーター型有機物質排出トランスポーターのナノ構造と作動機構

研究課題

研究課題/領域番号 13142205
研究機関大阪大学

研究代表者

山口 明人  大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60114336)

研究分担者 平田 隆弘  大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (90333450)
村上 聡  大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (30300966)
キーワード異物排出トランスポーター / 多剤耐性 / X線結晶構造 / 膜タンパク質 / AcrB / 多剤排出タンパク / RND / アンチポーター
研究概要

14年度は排出トランスポーター研究の歴史にとって記念すべき非常に大きな達成がなされた年になった。本特定領域のヒアリングの時にお約束した異物排出トランスポーターのX線結晶構造決定を、世界に先駆けてついに成功した。この成果は2002年10月10日発行のNature 419巻に掲載された。また、その分子構造はNature誌の表紙を飾ることになった。決定されたのは、大腸菌の主要異物排出トランスポーターAcrBの立体構造である。本構造は、異物排出トランスポーターとして世界で初めての構造であるだけでなく、プロトンと共役した二次性トランスポーターとして初めての原子レベルの分子構造決定である。また、SPring8を使用して決定された膜タンパク質のX線結晶構造としてはロドプシン、Ca-ATPaseに次ぐものであり、SPring8の成果としても特筆すべきものといえる。AcrB立体構造についての報告は、2002年7月のゴードン会議Membrane Transport Proteinsおよび2003年3月のゴードン会議Multidrug Efflux Systems、2003年4月の米国生化学分子生物学会シンポジウム、2003年6月のゴードン会議Molecular and Cellular Bioenergetics、および同7月のFASEB Meetingにおいていずれも招待講演で発表されるなど、世界的に大変反響を呼んでいる。本構造決定により、これまで謎とされていた異物排出トランスポーターの機能のいくつかがみごとに構造によって説明できることが明らかになった。まず、AcrBは外膜チャネルタンパクTo1Cと共役して薬物を直接外膜の外側に排出するが、決定されたAcrBの頭頂部は、2年前に決定されていたTo1Cの底部とぴったりかみ合う構造をしていることがわかった。また、細胞質膜の外側、ペリプラズムで働くβ-ラクタム抗生物質に対しても排出しているように見えることが謎とされていたが、本構造には、細胞質膜からペリプラズムに向かって突出した頭部の首の部分に横穴があり、その穴を通ってペリプラズムからも基質を取り込むことができる仕組みがあることが明らかになった。本構造の決定により、いよいよトランスポーターの研究においても分子構造を元にその作動機構を研究できる新しい時代に突入したことになる。本特定領域によってそのような大きな前進を勝ち取ることができたことを非常に誇りに思っている。
14年度は結晶構造ばかりでなく、動物の排出トランスポーター研究でも大きな前進があった。脳に特異的に発現する新規ABC型排出輪送体遺伝子ノックアウトマウスの作成に成功し、生後11週齢を越えたところで拡張型心筋症により死亡するという形質を持つことを見いだした。その原因解明は本年の裸題である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] S.Nagakubo, K.Nishino, T.Hirata, A.Yamaguchi: "The putative response regulator BaeR stimulates multidrug resistance of Escherichia coli via a novel multidrug exporter system, MdtABC"J Bacteriol.. 184. 4161-4167 (2002)

  • [文献書誌] S.Murakami, R.Nakashima, E.Yamashita, A.Yamaguchi: "Crystal structure of the bacterial multidrug efflux transporter, AcrB"Nature. 419. 587-593 (2002)

  • [文献書誌] H.Hirakawa, K.Nishino, T.Hirata, A.Yamaguchi: "Comprehensive studies on drug resistance mediated by the overexpression of response regulators of two-component signal transduction systems in Escherichia coli"J Bacteriol.. 185. 1851-1856 (2003)

  • [文献書誌] K.Nishino, Y.Inazumi, A.Yamaguchi: "Global analysis of genes regulated by EvgA of the two-component regulatory system in Escherichia coli"J Bacteriol.. 185(in press). (2003)

  • [文献書誌] 西野邦彦, 山口明人: "細菌ゲノムに潜む薬剤耐性因子"日本細菌学雑誌. 57. 453-464 (2002)

  • [文献書誌] 村上聡, 山口明人: "多剤排出トランスポーターAcrBの結晶構造解析"細胞工学. 21. 1520-1521 (2002)

  • [文献書誌] 村上聡, 山口明人: "多剤排出トランスポーターの結晶構造、ついに決まる"蛋白質核酸酵素. 48. 26-32 (2003)

URL: 

公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi