研究概要 |
あらゆる生物においてNa^+は細胞内部では低く保たれ、細胞外では高く、一定に保たれている。その調節は,細胞膜や細胞内小胞などの生体膜に存在するNa^+イオン輸送性の膜蛋白質によって行われている。この細胞の内外のNa^+勾配は、Na^+がエネルギーイオンとして使われていることと呼応している。本研究では、Na^+/H^+交換輸送蛋白質(NhaA, Nha1p, NHEと省略)の構造と機能、制御について分子レベルで研究を行った。本年度の成果として、真正細菌に広く存在する交換輸送蛋白質NhaAについてイオン輸送に関わる膜中ドメイン(TM)4,5,10,11について、それぞれを構成するアミノ残基をシステインに置換し、機能の変換およびNEMの結合を指標にそれぞれの残基の機能と空間配置を考察した。この結果、NhaAの中に水で満たされたchannel構造が4つのTMで形成されること、またイオン結合に関与する残基の配置が推定できた。さらにNhaAのカルボキシ末端に蛍光蛋白GFPの誘導体を結合し、細胞膜内でNhaAが2量体を形成していること、2量体の形成サブユニットはイオン輸送においてLi^+の結合にともなって相互の位置関係の変化(構造変化)をすることを明らかにした。酵母のNha1pのイオン輸送活性を直接測定する実験系を酵母内の輸送膜小胞にNha1pを蓄積させることによって実現した。その結果、Nha1pは一価のメタル陽イオン全般について輸送能を有すること、またそのイオンに対する見かけの親和性は低いことが明らかになった。Nha1pは、2量体を形成すること、2量体は粗面小胞体ですでに形成されていることも明らかになった。Nha1pに結合し耐塩力の増強に関与する新規因子(Cos3P)については、アイソフォームの遺伝子を欠失させ、それらの機能の解析を行った。ヒトの細胞に存在する4つのNHEについては、細胞内の異なる小胞に存在し、小胞内のpH制御に関わることを明らかにした。
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