研究概要 |
緑膿菌はMexAB-OprM排出トランスポーターを発現することによって複数の構造的に関係の薄い抗菌物質に耐性となる。このポンプサブユニットのうちMexBがポンプの本体であろうと考えられており、このサブユニットが抗生物質を選択し、これをエネルギー依存的に排出をしているものと考えられている。先に我々はこのMexB蛋白の膜トポロジーを決定したところ、このトランスポーターは膜を12回貫通する型のポリトピックトランスポーターであることを決定した。更に膜貫通部分(TMS)に5個の荷電を有するアミノ酸を有することから、これらはプロトンの通り道、もしくは抗菌物質の通り道を形成しているものと想定した。今年度はこの膜貫通領域に存在する荷電を有するアミノ酸残基の役割を明らかとする実験を行った。先ずTMS-7に存在するD407をD407K,D407A,D407Nに置換したところポンプは全く機能しなくなった。D407Eの変異体は野生株の約20%の活性を保持した。従ってこの残基はAspであることが必須であった。D408もD407と同様負の荷電を中性もしくは正の荷電に変異させると全く機能しなくなった。しかしD408Eは約80%の機能を保持した。従ってD408には負の荷電が存在しなければならないがAspであることは必須ではない。TMS-10に存在するK939についても中性もしくは負のアミノ酸では機能せず、正の荷電を有するK939Rの変異でのみ100%の機能を保持した。TMS-2に存在するK342及びE346は共に中性のアミノ酸、逆の荷電を有するアミノ酸もしくは同じ荷電を有するアミノ酸に変換しても正常に機能した。これらの結果を総合すると、D407,D408及びK939はプロトンの透過経路を形成しているものと解釈できた。この他にも二重、三重変異体の解析結果からもこの結論は支持された。
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